迅速避難 全員無事 【大船渡越喜来(おきらい)小 】
<3月25日・河北新報>
■大船渡・越喜来小は海抜ゼロメートル地帯で海から約200メートルにあったが、経験のない強い揺れが襲った直後、教員らは「津波が来る」と直感し、揺れが続く中、各教室を回って避難を指示し、昨年末に設置した非常階段を駆け上がった。
■記事のテキスト
東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた岩手県大船渡市三陸町にある越喜来(おきらい)小(児童73人)は、児童と職員計約80人が迅速に逃げ、全員が助かった。越喜来地区は市内で最も多い100人以上の死者を出した。学校も海から約200メートルで、海抜ゼロメートル地帯。津波で校舎全体が破壊されたが、高い避難意識が子どもの命を守った。
経験のない強い揺れが襲ったのは、1年生が帰宅しようとしていたときだった。
教員らは「津波が来る」と直感した。電気が止まり、校内放送が使えない。揺れが続く中、各教室を回って避難を指示し、昨年末に設置した非常階段を駆け上がった。
階段から通じる道路に出て約350メートル離れた公民館へ逃げた。1週間前に訓練をしたばかりで、2日前の地震でも同じルートで避難した。遠藤耕生副校長は「落ち着いて避難できた。命が守れ、本当に良かった」と胸をなで下ろす。
黒い波は3階建ての校舎をのみ込み、卒業証書や書きかけの通信簿もすべて失った。学校再開のめどは全く立たない。
臨時職員室として使う近くの幼稚園のドアに17日、6年生の一人から先生宛てに手紙が挟まれていた。
「流された中から習字道具を見つけてもらえました。学校で卒業できなくて残念だけど、いずれ卒業できる日を楽しみにしています。また先生方と友達全員に会えることを楽しみにしています」(坂井直人)