「津波のときは井戸を見ろ」 先人の教えで津波避け助かる
                    <3月16日・産経ニュース>

■「津波の時は井戸に気をつけろ」。大槌町栄町の佐藤綾子さんは二十数年前に近所の高齢者から聞いたこんな教えを覚えていて、津波から逃げ延びた。

倒壊した自宅の周りを片付けるお年寄り

 

 「津波の時は井戸に気をつけろ」。岩手県大槌町栄町の佐藤綾子さん(59)は二十数年前に近所の高齢者から聞いたこんな教えを覚えていて、津波から逃げ延びた。「昔聞いた話が本当に役に立つとは」と先人の知恵に驚いた様子だった。

 佐藤さんは二十数年前、当時小学生だった長女(32)と、学校の学習発表会のために津波について勉強していた。

 そのとき、明治29年に起きた明治三陸大津波に被災した近所のお年寄りから体験談を聞いた。「津波の時は井戸の水が引いて、ゴボゴボという音がする。井戸には気をつけて」と佐藤さんは振り返る。それ以降、「津波が来そうな時はとにかく井戸を見る」と肝に銘じていたという。

 この知恵が今回の震災で生きた。揺れが収まった後、佐藤さんはすぐに自宅の井戸をのぞいた。「(井戸の水が)今まで見たことないぐらいに真っ茶色に濁っていた。これはまずいと思って、すぐさま逃げた」

 自宅は津波に飲み込まれたが、佐藤さんは高台に逃げて助かった。

 高台から見ると、町に煙がたなびいていた。「よく見ると水しぶきだった。あんなに近くまで来るなんて…」と今回の津波の壮絶さを語った。

 「先人の教えは大事なんだと、今回のことで教わりました」と笑顔を見せた。


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大津波への対応